NEXTネスタ?アレッシオ・ロマニョーリとは何者なのか
サッカーの変化によりCBに求められる能力は変化している。守備が出来てもビルドアップが出来なければ、良いCBと評価されなくなってしまっているのだ。現代サッカーでは明らかにCBに求められる能力は増えていると言えるだろう。
また、サッカーはミスのスポーツと呼ばれているが、基本的にCBとGKにミスは許されない。仮にCBやGKの選手のミスで試合に負けたとしたらその選手はサポーターから犯罪者のような扱いを受けてしまう。
しかし、CBというポジションは難しいにも関わらず、高い評価を受けられないポジションなのだ。事実ヨーロッパの年間最優秀選手に贈られるバロンドール賞を受賞したCBの選手はここ20年間でファビオ・カンナバーロただ1人である。
求められる能力は増え、そしてミスも許されないにも関わらず、高い評価を受けることは他のポジションより難しい。現代サッカーはCB不遇の時代と呼んで差し支えないだろうと私は思う。
さて、今回はそんなCB不遇の時代に登場した今後10年の間イタリア代表とACミランを引っ張っていくであろうアレッシオ・ロマニョーリという選手について紹介していきたい。
プロフィール
国籍 イタリア
身長 188cm
年齢 24歳
ポジション CB
ASローマのユース出身で12-13シーズンにローマでデビューを果たした。 2014年にサンプドリアへレンタル移籍。そして、2015年にACミランへ移籍し、移籍したレオナルド・ボヌッチに代わり18-19シーズンからキャプテンに就任した。
イタリア代表では各年代で出場機会を得ていた。A代表で出場したのは2016年のW杯予選のスペイン戦である。
ASローマのユースチーム出身であるが、同じ街のライバルチームであるラツィオのファンであることを公言している。ちなみに利き脚は左。
プレースタイル
ロマニョーリの特質すべき点と言えば、やはりポジショニングの良さやスライディングなど守備そのものの巧さだろう。
守備そのものの巧さとは何かということだが、身体能力の差を技術で埋めることだと私は思う。まずは↓の動画を観ていただきたい。
これは11-12シーズンのACミランvsバルセロナの1シーンである。ボールを持っているのがリオネル・メッシ。そして対峙するのがアレッサンドロ・ネスタである。
スピードの差は一目瞭然だ。だが、ネスタはギリギリのところで置いていかれず、そして最後にしっかりとスライディングでシュートをブロックしている。この1プレーにこそ守備の巧さというものが詰まっているのではないかと私は思う。
しかし、このプレーは極端な例だ。恐らくロマニョーリはまだこの域まで達してない。現時点でここまで守備が巧い選手はほとんど居ないと私は思う。恐らく、このレベルの芸当が出来るのはキエッリーニクラスの選手くらいだろう。
極論だが、身体能力がズバ抜けて高い選手にとっては守備の技術はあまり重要ではないと私は思う。頭を使ってプレーしたり、ギリギリのところでスライディングをしなければいけない状況になる前に理不尽な身体能力で全て弾き返せれば問題ないのだ。
しかし、そこまで理不尽な身体能力を持つ選手は現時点では存在しない。だからこそ守備の技術が必要になってくるのである。
とはいえ、守備の技術より身体能力の高さで評価を上げている選手は一定数存在するのもまた事実だ。恐らくレアルマドリーのヴァランは守備者としての能力より身体能力の高さでCBとして高い評価を受けている選手のわかりやすい例だろう(守備者としての能力が低いと言っているわけではない)。
さて、ロマニョーリに話を戻すが、彼は守備しか出来ないというわけでは無い。現代のCBに求められるビルドアップの巧さももっている。縦パスを入れる能力はセリエAの中でもかなり高いレベルにある。
パワーもあって当たり負けすることもほとんどなく、跳ね返しの能力も高レベルである。(ここで言う跳ね返しの能力とは競り合いの強さやクリア能力をおおざっぱにまとめた能力のこと)
欠点はスピード不足や大舞台での経験の少なさだろう。ここ最近はステップワークの怪しさなどは大分改善されてきておりセリエAの中ではスピード不足に関しては上手く誤魔化せてはいる。
しかし、CLやW杯などの大舞台でスピード不足を誤魔化しきれるかと言われれば疑問だ。ここ数年ミランとイタリア代表が暗黒期だったこともあり、ロマニョーリは大舞台での経験が乏しい。アザールやオーバメヤンなど真のスピードスターと対峙したときスピード不足が致命傷となる可能性は低くはないだろう。
現在世界最高のCBと評されるクリバリやファンダイクは高い身体能力を持つ上に大舞台の経験もある。このクラスの選手にロマニョーリが追い付くにはミランとイタリア代表が今の状態のままではかなり難しいと言わざるを得ない。
ネスタを超えるために
ロマニョーリがネスタクラスの選手になるのはかなり難しいだろう。ネスタはCBとしてほぼ完璧な選手だったのだ。CB界のメッシとネスタを形容する人がいるほどにネスタはCBとして優れていた。怪我が多かったことを除けば欠点らしい欠点はほぼ無かっただろう。
残念ながら私はネスタに関しては引退したシーズンしか観ていないのだが、それでもCBとしては優れていたと記憶している。上記で紹介したメッシとの一対一が引退したシーズンのプレーであると言えばネスタがどれほど優れた選手だったか理解してもらえるだろうか。
しかし、ここまで理解した上で私はロマニョーリにはネスタ以上の活躍を期待している。守備者としてもサッカープレイヤーとしてもネスタを超えるのは難しいと理解した上で私がこのようなことを言うには理由がある。
確かにネスタはミランでもイタリア代表でも全てを勝ち取った(2006年のW杯優勝時はグループリーグで負傷し、決勝トーナメントで出場は叶わなかった)。しかし、当時のミランとイタリア代表のメンバーを見れば全てを勝ち取ることは簡単とまでは言わないが、不可能なレベルで難しいことだったとは言えないだろう。
当時のミランはマルディーニを筆頭にシェフチェンコやカカー、イタリア代表では若き日のブッフォンやバロンドーラーであるファビオ・カンナバーロなど錚々たるメンバーが揃っていたのだ。
対してロマニョーリが置かれている状況は対照的だ。かつてCLを7回も制覇した本来のミランの姿は見る影もなく、かつてに比べてイタリア代表はスター選手が居ないと嘆かれている。置かれている状況が全く違うのだ。
そして、もう1つロマニョーリがネスタと違うところはクラブでキャプテンを務めているということだ。1プレイヤーとしてプレーするのとキャプテンとしてプレーするのではプレッシャーにも大きな差があるだろう。
プレーの面だけでネスタを超えるのは不可能に近い。だが、サッカー選手の評価を決めるのはプレーだけではない。苦しいときにこそチームを鼓舞してチームを引っ張りそして勝利へと導いていけるかどうかも選手としての評価を上げる1つのポイントだと私は思う。
今後ロマニョーリがネスタと同じクオリティーのプレーを見せ続け、キャプテンとしてチームを鼓舞して試合に勝ち続けられたならばネスタを超える選手と呼んでも差し支えないのではないかと私は思う。もし、ミランとイタリア代表がかつてのように全てを勝ち取れるチームになればロマニョーリは伝説の選手として歴史に名を残すだろう。
だからこそ、今シーズンミランは何としても熾烈なCL争いを勝ち抜き、来シーズンCLの舞台へと復帰しなければならない、いやロマニョーリがミランをCLの舞台へ導かなければならないのだ。史上最高のCBを超える第一歩として。
拙い文章でしたが、最後までお読みいただきありがとうございました。